表題番号:2003A-526 日付:2005/03/22
研究課題19-20世紀転換期ロシアにおける身体と性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 助教授 草野 慶子
研究成果概要
 2003,2004年度の特定課題研究助成費を受け、2003年度には約3週間にわたる海外調査(ロシア)を行い、また各年度にわたって、資料収集に務めた。
 具体的な研究内容としては、以下の各項目にわたり、調査、分析を進めた。
 1)1909年に活動を開始したバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)をめぐって、同時代の思想、文学、他の芸術諸領域を横断的に展望し、バレエ・リュスを成立せしめた、19-20世紀転換期の身体観を浮かび上がらせること。これにはもちろん、ロシアの社会と文化のみならず、主に西欧世界との交流のなかで生起する様々な文化的事象への参照を含んでいる。
 バレエ・リュスの研究は、従来バレエ史の枠のなかで、振付や舞踊手の研究として行われるか、あるいは、美術や音楽との連関が分析されるかであり、いずれにしても、同時代のロシア思想史、文学史との結び目がクローズアップされることははなはだ少なかった。本採択課題の目的は、この未開拓の極めて重要な領域に踏み込むことであり、それを目指して、画家レフ・バクストと文学者、思想家たちとの交流、あるいはロシアにおけるイサドラ・ダンカン受容史をテーマに選択し、論文を作成した。
 2)19-20世紀転換期ロシアの身体観をバレエ・リュスの成立史に追う一方で、これと密接に関連する、性愛の概念、ジェンダーやセクシュアリティについての研究を進めること。1)の項目に比較すると、こちらの深化の度合はやや劣るかもしれないが、2004年度後期、NHKラジオカルチャー・アワーの講師を担当し、その読本として、性愛とジェンダーを軸に、ロシア文学に関する2冊の著書を発表した。これらの成果を踏まえて今後数年にわたり、ソロヴィヨフやベルジャーエフ、ヴャチェスラフ・イワーノフらの性愛を概念をまとめる作業を行う予定。