表題番号:2003A-523 日付:2005/03/21
研究課題共分散構造モデルによる心理学研究のための実践的手法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 豊田 秀樹
研究成果概要
 研究期間の前半は,当研究室に寄せられた共分散構造分析に関する「質問」を集大成した.初心者が躓きやすい問題に配慮しながら質問に対する回答を編集し,『共分散構造分析[疑問編]』をあらわした.
 研究期間の後半には,共分散構造分析の下位モデルの1つである項目反応理論に焦点化して実践手法の整理を行った.本研究は4つの章から構成されている.第1章では,基本となる2値(正誤)反応データに対するロジスティックモデルを推定法を中心にして詳述した.ロジスティックモデルは応用的にも最も重要である.続く3つの章では,第1章の内容を別々の観点から発展させた.第2章では,2値(正誤)反応データばかりでなく,多値反応のモデルを論じた.「入門編」においても多値段階反応モデルを解説したが,ここでは名義反応モデル・評定尺度モデル・連続反応モデル・部分採点モデル等,さらに広範なモデル群を導入している.第3章ではIRTの数理的仮定を緩める試みがなされた.通常のIRTには,1次的特性の仮定,被験者の等質性,局所独立の仮定,時間制限のない仮定など,いくつかの重要な数理的制約が導入されている.それらは熟考の結果として導入された制約であり,いたずらに排除すべきものではないが,目的に応じて制約を除くことができればさらに豊かなテスト運用が可能になる.最後の第4章では,IRTの直接的な改良もしくは拡張のモデルについて論じている.テストに関わる多くの方々に,本研究がが少しでも参考になって欲しい.