表題番号:2003A-514 日付:2005/03/21
研究課題収益性評価を基礎とする商業用不動産担保制度の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 助手 青木 則幸
研究成果概要
 あるべき不動産収益の担保化制度を探究する議論は、あるべき収益不動産担保制度(ないし、より広く、収益不動産金融制度)を視野に入れたものでなければならない。この点、わが国の議論は、従来、手薄であった。当研究では、アメリカの議論状況を研究することによって、収益の価値に着目した不動産担保制度の制度設計に関するモデルの抽出を試みた。また、このモデルの輪郭を明らかにするため、関連する2領域の研究を行った。具体的には、以下のとおりである。
 第1に、アメリカにおける収益型不動産担保制度の史的展開を研究した。これは、前年度までの研究成果である、アメリカにおける不動産収益の担保化制度の展開を踏まえたものである。賃料譲渡制度の展開は、商業不動産担保取引を事業(ないし、事業の一環としての価値を有する資産)の包括的担保であるとみなす理解から導かれたものである。当研究では、その理解が、資金供給者にとっての融資の意義を、不動産事業への投資という性質を強くもつものに変容せしめた、市場動向によって導かれたものであることを明らかにした。
 第2に、事業の収益に着目した資本市場からの資金調達という点で、収益不動産の担保化と同一の性質をもつものが、「フューチャー・キャッ・シュフロー(将来発生する収益)の証券化」である。ただし、アメリカの議論状況は、むしろ両者を区別する方向性にある。当研究では、その異同の解明を試みた。
 事業の包括的な証券化という点では、近年、アメリカよりもイギリスにおける「ホール・ビジネス(事業全体)の証券化」が注目を浴びている。当研究では、第3に、このイギリスにおける事業の証券化の担保制度における意義を検討した。