表題番号:2003A-106 日付:2004/04/22
研究課題信用リスクを考慮した資産負債管理に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 葛山 康典
研究成果概要
 本研究では、伝統的な投資意思決定法である正味現在価値法をより一般的なフレームワークにおいて検討した。NPV法が投資の拡大・縮小・延期に関する価値を正しく評価できないことは、リアルオプションの枠組みにおいて指摘されてきた。投資の延期を考慮に入れた場合、投資実行時期の決定に資本コストが変動することによる影響が大きいことをIngersoll Rossが指摘している。
 一方で、投資の実行にかかるコストも不確実性を有すると考えるのが妥当である。McDonald Siegel はこのような一般的な枠組みで投資実行の最適なタイミングを導出している。また、近年コーラブル債を用いて将来のキャッシュフローを割引いて計算されたNPV
を計算し、これがゼロと一致した時点で投資を行うことが最適であることが証明されている。コーラブル債の価格はGNMAなど、頻繁に取引される債権の価格を用いることが可能であることから、このような改訂NPV法による最適投資時点の決定は可用性が高い。
 本研究では、改訂NPV法をヘッジポートフォリオの観点から分析したうえで、多期間の資産負債モデルの視点から、投資意思決定について検討を加えた。さらに、改訂NPV法を最適制御問題の観点から定式化し、ヘッジポートフォリオの構築による投資意思決定の最適性を示した。