表題番号:2003A-078 日付:2004/03/24
研究課題微動測定に基づいた地盤構造モデル作成手法の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 前田 寿朗
研究成果概要
本研究では,微動測定結果を用いて地盤構造モデルを構築する手法の開発を目的としている.15年度前半においては,14年度に測定を行った北千葉での微動観測データを用いて,水平/上下スペクトル比の水平成分の方向について検討を行った.粒子軌跡の分析にはComplex polarization analysisを用い,粒子軌跡が安定しかつレイリー波の有する楕円的な軌跡を示す方向の水平成分を用いた.その結果,Complex polarization analysisで評価された方向が,目視により確認した粒子軌跡の方向と整合的であることを確認できたが,評価された水平成分を用いたH/Vスペクトルの安定度については,多少の改善が見られる程度であることがわかった.

15年度夏期において,アンコール遺跡バイヨン寺院の劣化・崩壊要因を探る研究の一環として,王宮前広場において微動アレー測定を実施した.遺跡周辺の地盤構造に関する情報はボーリング調査結果のみであり,地盤を含む解析モデルを作成するために,地盤構造の推定を行った.水平1成分を用いたH/Vスペクトルは,Hv手法を使用することにより安定したピークとトラフを示し,アレー観測から評価したレイリー波位相速度は10Hz~20Hzで連続した曲線を示した.位相速度のシミュレーションにより地盤浅部構造を,H/Vスペクトルのシミュレーションにより深部構造を推定した.遺伝的アルゴリズム等を用いずに試行錯誤的に地盤構造を推定したところ,通常のレイリー波基本モードではボーリング調査結果に調和的なモデルの構築にはいたらなかったので,高次1次モードを用いてモデルの構築を行い,ボーリング調査結果,位相速度,H/Vスペクトルのいずれも説明できるモデルを作成することができた.位相速度とH/Vスペクトルを同時にシミュレーションし,地盤モデルの高精度化を図る上記手法の有効性は,今後の自動化において有用な知見であると考えられる.