表題番号:2003A-075 日付:2006/10/24
研究課題膨潤性雲母系資源原料の化学修飾による多目的高機能性構造素材の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 山崎 淳司
研究成果概要
膨潤性雲母粘土鉱物の1種であるハイドロバイオタイトは、バーミキュライトと黒雲母の長所を併せ有するが、バーミキュライトと黒雲母の中間的な物性であるとともに、両構造単位層の積層が秩序型か無秩序か、統計的な混合粒子なのか、今だに議論が分かれているなど、実体が完全には解明されていない物質である。本研究では、いくつかの産地の典型的なハイドロバイオタイトについて結晶化学的基礎物性を調べると共に、銅、ニッケル、銀および亜鉛の遷移金属イオンまたは第4級アルキルアルコールの抗菌性を有する有機化合物を構造層間へ導入して複合体を調製して、抗菌性や触媒活性などの物性について調べた。その結果、本実験で用いたハイドロバイオタイトは、透過電子顕微鏡観察から、2単位層(バーミキュライト型層と黒雲母型層)の不規則型混合層構造をもつことがわかった。これは、従来報告されている2単位層の1:1規則型混合層が特異的であることが示唆された。また、層間の交換性陽イオンの遷移金属イオンによる置換量は、バーミキュライト(ジンバブエ・シャワ産)に比較して半分以下であり、単位層のうちバーミキュライト型層が選択的に置換されることが示された。遷移金属イオン置換体のうち、銀置換体がメタノール、エタノールおよびアセトアルデヒド気体の触媒活性が高く、その分解効率は接触温度に大きく依存することがわかった。さらに、第4級アルキルアルコールを層間に導入すると、単位層間で導入分子が配向的に分配されることが、表面拡散反射フーリエ変換赤外分光測定結果から示された。この第4級アルキルアルコールを導入されたハイドロバイオタイトは、黒カビ(標準カビ)を散布・培養した培地上に置いても有意の大きさの阻止円が観察できないことから、層間に導入された第4級アルキルアルコールは安定であり、長期的な徐放性が期待されることが示唆された。