表題番号:2003A-074 日付:2004/03/23
研究課題エンジン軸受の汎用的及び簡略化モデルによる理論解析と実験的検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 林 洋次
研究成果概要
 本研究は、過酷で複雑な運転状態下におけるエンジンの複数の滑り軸受の互いに連動した潤滑メカニズムを理論的および実験的に解明することによって、エンジン軸受の汎用的および簡略化モデルを提案し系統的な理論解析を構築する。そのために、以下の実験的・理論的研究を行った。
 実験的研究では、すでに試作した試験機を改良して、実機のエンジン軸受の相対運動を模擬し、軸を回転させ同時に電磁加振機によって動荷重を軸受に加える負荷機構と変位機構のもとで、透明なアクリル樹脂で製作した軸受を使用して、軸受隙間内の油膜破断の撮影ならびに変動油膜厚さや変動油膜圧力などの測定を行った。一方、理論的研究では、ピストン、ピストンピン、コネクティングロッド、クランクシャフトの常微分運動方程式を導出し、かつこれらの要素を連結する複数の滑り軸受の油膜に対する偏微分潤滑方程式に対して、実験により提案した油膜破断を考慮した油膜圧力の境界条件を導入し、連立常微分偏微分方程式を初期値境界値問題として理論解析を行い、変動最小油膜厚さや最大油膜圧力などを求め、エンジンのすべての滑り軸受の相互連成理論解析の汎用的取扱いを確立した。さらに、この汎用理論解析にいくつかの仮定を導入してエンジンの個々の滑り軸受の簡略化モデル解析手法を考案した。コンロッド大端部軸受とピストンピン軸受に対して、それぞれ4種類の簡略化モデル理論とすべての軸受の連成を考慮した汎用理論解析の合計9種類の解析手法のもとで膨大な数値解析を行い比較検討した結果、コンロッド大端部軸受に対する従来の近似解析をさらに発展させるとともに、潤滑メカニズムが解明されていないピストンピン軸受の解析に成功した。