表題番号:2003A-049 日付:2004/03/25
研究課題多自然居住地域における市町村合併の経緯とその意義
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 宮口 とし廸
研究成果概要
 本研究は、一昨年度から昨年度にかけて科学研究費および特定課題研究費の助成を受けて実施した、「多自然居住地域の創造のための地域連携の実態調査と展望」の更なる発展として、現実に進んでいる市町村合併の状況の中での多自然居住地域の創造の可能性を検討しようというものである。今回は前年度に取り上げた4地域の中から特に熊本県阿蘇地域について現地ヒアリングを行った。
 阿蘇地域(阿蘇郡)12町村は、当初県が阿蘇郡全体が一体となる合併案を提示したものの、これに対する支持はなく、4ないし5のグループに分かれる様相を見せた。その後の紆余曲折を経て、現在次のような展開を見せている。
 阿蘇外輪山の中の北部は阿蘇地域の中心部ともいえる地域であるが、ここでは阿蘇町・一宮町に外輪山東側の産山村・波野村の協議会が作られ、現在産山村が離脱中である。外輪山の北部はかつて小国郷と呼ばれた小国町と南小国町の2町の協議会で検討中である。南郷谷と呼ばれる南部では、長陽村・久木野村・白水村が南阿蘇村を作ることに決している。ここはあえて村を名乗る。その東の高森町は合併しないで単独で歩む姿勢を強め、最も南の蘇陽町は南西部に隣接する清和村・矢部町との合併を選んだ。また外輪山の西側になる西原村は、熊本市をも含めて、西部平野部での合併の以降である。
 これらの推移の状況には、住民とのやり取りを含む手続き上の問題がかかわっていると見られるが、それに加えて、住民の生活行動から浮かび上がってくる圏域のあり方を反映している面も強く見られる。産山村は昨年の調査で、病院・高級な消費財などの機能において、隣町を超えて熊本市の利用が目立っており、蘇陽町も、矢部町という阿蘇地域外の機能の利用が目立った。西原村にいたっては多くの機能を熊本市で充足しており、現在の市町村合併の動きは、古い時代の枠組みとは無関係に、住民の生活行動を反映するものになりつつあることが見出せた。