表題番号:2003A-045 日付:2004/02/26
研究課題光生物的水素生産性向上に向けたラン色細菌の改良
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 櫻井 英博
研究成果概要
1.ラン色細菌ヒドロゲナーゼの分布
 これまで、ラン色細菌の多くは取込み型ヒドロゲナーゼ(Hup)と双方向性ヒドロゲナーゼ(Hox)の両方を持つが、Hoxを持たない株の存在が1例報告されていた。ヘテロシスト形成するラン色細菌において、ヒドロゲナーゼの分布を調べるため、日、仏、米国の藻類保存センターが所有する15株についてHupとHoxの遺伝子および活性の存否を調べた。その結果、Hupはすべての株が持っており、その生理的役割としては、エネルギー回収により窒素固定効率を高め、自然界では生存に有利に働いている可能性が強く示唆された。一方、Hoxは15株中12株が持つが、持たないものとして既報の1株に加え、新たに2株見つかった。それらはソテツ、コケと共生し、あるいは菌類と共生し地衣類の構成生物となっているという共通点が見られ、ラン色細菌は共生関係の中で窒素固定を十分にしていると思われる。このHox分布とΔhoxH突然変異株についての解析結果は、Hoxは光合成で生じた余剰な還元力を排出するための調節弁として働くという説と調和したものである
2.ホモクエン酸合成酵素遺伝子破壊株の水素生産性に関する評価
 水素生産活性は、窒素欠乏培地に移して約30-50時間後に一旦上昇した後、やや急速に低下するが、その原因としては窒素栄養充足によってニトロゲナーゼ活性が低下することが考えられる。したがって、窒素固定に向いていた電子を水素生産により多く振り向けるようにニトロゲナーゼを改変すれば、窒素固定効率が低下し、その低下分の窒素栄養を満たすために活性が持続するばかりでなく、水素生産の変換効率が上昇する可能性がある。ニトロゲナーゼの活性中心にはホモクエン酸が配位し、嫌気性窒素固定細菌Klebsiella pneumoniaeのホモクエン酸合成酵素NifV欠損株のニトロゲナーゼin vitro活性は、窒素固定は著しく低下するが水素生産は変わらないと報告されている。Anabaena PCC 7120のnifV遺伝子はnifV1とnifV2の2コピーあるので、それらの一方または両方を破壊した3種の変異株、ΔnifV1、ΔnifV2、ΔnifV1/ΔnifV2株を野生株とΔhupL株から計6株作製し、その水素生産性について研究を行っている。