表題番号:2003A-031 日付:2004/11/24
研究課題近世フランスの政治情報とジャーナリズムに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 森原 隆
研究成果概要
 近世・近代のフランスの政治情報とジャーナリズムに関する研究を進めるために、科研での調査と連動
させて、当時の新聞・雑誌などの定期刊行物についての調査を、京都大学、同志社大学、金沢大学などに
おいて行った。また専修大学や一橋大学でも関連資料の収集に努めた。さらに、諸外国から近年の研究動
向に関連する研究文献の発注と入手に努めた。とくに、ルイ16世即位以後のフランスにおけるジャーナリ
ズムの状況について、とりわけ、1780年代の外務大臣ヴェルジェンヌの時代と革命前夜の時期における、
当時の政治情報やジャーナリズムの状況について分析をすすめた。例えば、「ジュルナル・ポリティーク」
をキー概念とする『メルキュール』誌と、同時期の『ガゼット』紙の記事の比較的な検討を、ほぼ2年間
にわたって詳細に行い、「ジュルナル・ポリティーク」と「ガゼット」概念に基づくそれぞれの政治報道
の内容や性格を吟味した。この時期のジャーナリズムが近代的なジャーナリズムの理念にどの程度合致す
るものであるかどうか、革命期のそれとの連続性、断絶性についての論議を展開した。近年政治思想史や
他の分野からも注目されている「世論」、「公共空間」の問題を理論的、理念的に進めると共に、実証的
な見地から17、18世紀のフランス史の政治史的な流れの中でこの検証が可能かどうかの分析を進めた。ま
たJ・ハーバーマスや近年のK・ベイカーの議論をふまえて、こうした研究視角の可能性や有効性につい
て検討を加えた。広島史学研究会で二度研究報告を行い、2003年度広島史学研究会大会シンポジウム(10
月25日.於:広島大学)「近世の出版の社会史」において「近世フランスにおける新聞出版とジャーナリ
ズム」と題する基調報告を行った。これに関する論稿を執筆、脱稿し、「史學研究」に掲載予定となって
いる。