表題番号:2003A-027 日付:2013/04/28
研究課題祝祭・民間習俗・図像の観点から見たキリスト教のヨーロッパ土着化問題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 田島 照久
研究成果概要
本研究はドイツ文化圏のキリスト教において現在教会暦に従って行われている祝祭の現状を現地調査し、キリスト教祝祭のうちに取り込まれたゲルマン的習俗の要素を浮かび上がらせるとともに、キリスト教教義による再解釈によって民衆の生活に残存、ないし保存されることが可能となっている民間習俗をドイツ、スイス、オーストリアの村や町で調査しこれらの観点から、キリスト教のヨーロッパにおける土着化の姿を認識しようとするものである。
 オーストリア、北ドイツを中心に実地調査を行った。オーストリアは民間習俗が今でも民衆の生活に内に深く根付いた形で残存しているチロル地方のアルプバッハを調査した。その結果他の地方とは異質の「精霊やらい」の習俗等が残されていることが判明した。
 またドイツではプロテスタント信者が多いとされている北ドイツのハンブルク、ブレーメン、リューベック、ツェッレの秋季習俗、とくに14年度秋に行ったライン・モーゼル河畔の現地調査との比較からワイン祭を中心に調査を行った。さらにゴスラールやツェッレの家屋銘文の調査、また近年の研究でドイツ中世の神秘思想家マイスター・エックハルトの生地とされるに至ったチューリンゲン地方のタムバッハも調査した。これらの現地調査によって収集した映像資料は「宗教民俗学資料データベース」(管理責任者 田島照久)のうちに加え、インターネットによる一般公開を目下準備中である。
 ドイツ語文化圏における降誕祭習俗は豊富な資料を収集しえたが、必ずしもゲルマン習俗とは関係のないアメリカの降誕祭習俗も短期間でサンプル数も少なかったが比較習俗の観点からニューヨークを中心に現地調査をおこなうことができた。