表題番号:2003A-024 日付:2005/03/25
研究課題教育行政法人(エージェンシー)のアカウンタビリティ遂行に関する日英比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 助教授 沖 清豪
研究成果概要
 本研究は科研若手研究(B)の同一名称での研究を補完するものとして、教育行政機関による教育行政機関自体への評価活動の在り方とそのアカウンタビリティ遂行状況について検証を行った。
 日本においては1990年代後半より形式上分権化されている地方教育行政組織としての教育委員会の機能について様々な議論がなされている。それに対して英国の場合、2002年以降中央行政機関としてのOFSTEDによるLEA(地方教育当局)への各種評価活動が実施され、そのアカウンタビリティ遂行状況が検証される事態となっている。こうした事情を踏まえ、特に中央行政機関-地方教育行政機関-学校の三者間における近年のアカウンタビリティ関係を検証したところ、以下の知見を得た。
 第一に、日本の場合、特に地方教育行政機関-学校間において学校(外部)評価活動が全国的に急速に制度化されている。本点は特に中央行政と地方教育行政との関係における相互間のアカウンタビリティ関係の弱さ(正確には一方向性)を踏まえるときわめて特徴的な点である。
 第二に、英国の場合、上述のLEA評価活動が多種多様な形態で実施されている。機構監察(organisational inspection)は、活動全般を総合的観点から監察する試みであり、学校改善に関するLEAの政策、学校改善状況、特別な教育ニーズ、社会統合の促進、管理課題の5点について検証が行われている。さらにその前提として、各LEAには新たな教育開発計画(EDP, education development plan)の設定が求められており、機構監察はEDPに示された開発計画の実行可能性などを含めて検証することとされている。
 今後の課題として、上記の活動以外での、日英両国における教育行政機関、とりわけ新たな組織としての法人化された機関によるアカウンタビリティの遂行状況について、具体的事例に基づく検証が必要とされる。