表題番号:2003A-023 日付:2004/03/26
研究課題子どもの医療に対する親の同意拒否と裁判所の関与についての比較法的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助手 横野 恵
研究成果概要
 コモンウェルス系の諸国を研究対象に,子どもの医療に対する親の同意拒否について,法がいかなる対応をしているのかを検討した.
 その結果,いずれの法域においても,具体的な手続の面では相違があるものの,イギリスから継受された裁判所のパレンス・パトリエ管轄権を基礎とした司法による介入が行われていることが明らかになった.他方で,アメリカにおいては,家庭に対する国家の介入を最小限にとどめ,また裁判所の負担の増大を避けるために,病院内倫理委員会や倫理コンサルテーションを利用した紛争解決が促進されてきている.
 イギリスにおいては,従来の,親が子どもの治療に対する同意を拒否し,それに対して医療側が裁判所の関与を求めるケースに加えて,子どもの医療に関して裁判所が判断を求められる新たな類型の事例が散見されるようになってきている.すなわち,(1)子どもの治療の差し控え・中止を求める医療側を治療の実施・継続を求める親が訴えるケース,および(2)親が治療の実施・継続を求めているにもかかわらず,医療側が治療の差し控え・中止を求めて裁判所に申し立てるケースである.
 このようなケースが出現するようになった背景には,医療資源の問題および小児に対する生命維持治療の差し控えまたは中止に関する学会ガイドラインの公表があると考えれられる.