表題番号:2003A-019 日付:2004/03/20
研究課題ジョルジュ・バタイユの思想および行動と彼の時代
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 吉田 裕
研究成果概要
 バタイユの政治的行動をたどる仕事を終えて、それを『バタイユ・マテリアリスト』の標題で、書肆山田から2冊本で出版した後、もう一つの枢要な主題、宗教的活動をたどる仕事に取りかかった。その最初は、彼の最初期からあった宗教的関心をたどることで、「エクスターズの探求者」の標題で「人文論集」に発表した。ついで、彼の宗教的関心の頂点というべき戦争中の探求を検討する仕事に取りかかった。これについては、『内的体験』を徹底的に読むことを試みることにし、「内的体験をめぐって」の標題で「AZUR」に連載を始めて、今年度は2回目を秋に提出したところである。この仕事により、民族学の知識、精神分析、キリスト教、またエロチスムが渾然となっている、彼の宗教意識をある程度まで解きほぐし得たと考える。次回(第3回)には、共同体、および戦争という視点から『内的体験』を検討し、それによってこのテーマに一応ピリオドを打つつもりでいる。
 またこの主題に関わる研究活動としては、次のものがある。フランスで1999年にバタイユのこの時期の書簡と文書を集めた重要な資料集が出版されたが、これを若い研究者4名と一緒に翻訳中である。これはバタイユ研究のための基礎的な文献になるに違いないものである。さらに、バタイユに対する批判的な視点を獲得するために、バタイユを彼より10才ほど若い作家クロソウスキーと比較する仕事も始めていて、その最初の成果を「バタイユからクロソウスキーへ――『ディアナの水浴』をめぐって」として発表した。