表題番号:2003A-017 日付:2004/03/26
研究課題アメリカ刑事訴訟における有罪答弁の事実的基礎に関する審査制度の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 田口 守一
研究成果概要
 2002年8月のアメリカ法調査、2003年3月のカナダ法調査に引き続き、2004年9月にはイギリス法の調査を行った。イギリス法については、カナダ法がアメリカ法とは若干異なることから、とりわけイギリス法とカナダ法の比較という問題関心から、イギリスの有罪答弁制度の調査を行った。
 2004年9月に、ロンドンの郊外にあるスナレスブロック刑事裁判所(Snaresbrook Crown Court)におけるとくにケネディ裁判官(H.H.J. William Kennedy)の有罪答弁受理手続を傍聴した。裁判官の強い訴訟指揮が際だった手続であることに強い印象を受けた。また、事前に質問表を提出しておいたので、傍聴の前後にケネディ裁判官から、質問表に対する解答を頂いた。そこでは、とくにアメリカ法におけるような死刑を逃れるための有罪答弁(いわゆるAlford Plea)に相当する事例あるいは議論がイギリスにあるかとの質問に対して、そのような答弁はありえないし、経験したこともないし、理解もできないとの解答があったことが参考になった。アメリカ法におけるような「取引」形態はイギリス法にはありえないことが確認できた。
 論文として、「有罪答弁の事実的基礎――いわゆるアルフォード・プリーをめぐって――」において、被告人が有罪答弁を行いつつ、「自分は無実である」と主張する事例について、その答弁を有効と認めた1970年のNorth Carolina v. Alford 事件を検討し、そこでの「事実的基礎(factual basis)」の意義について考察した。イギリスのケネディ裁判官への質問の事前準備の意味を持つ研究となった。