表題番号:2003A-008 日付:2004/02/12
研究課題中小企業、経済発展と金融制度
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 藪下 史郎
研究成果概要
 本研究では、「中小企業と金融市場」と「経済発展と金融制度」という問題を理論的かつ実証的・歴史的に分析している。これらの問題はともに、不完全情報や取引費用が大きな役割を果たす分野である。本年度においては、昨年まで行ってきた研究を継続すると共に新たな作業をも開始した。本年度の研究内容は次のとおりである。
(1)昨年来進めてきた大学院生鈴木久美氏との共同研究「中小企業への貸出金利に関するパネルデータ分析」は、改訂版を早稲田大学・現代政治経済研究所ディスカッション・ペーパーとしてまとめた。
(2)昨年度の第7回日仏経済学会議で行った問題提起を発展させることによって、「グローバリゼイション下での経済制度と金融--情報の経済学からの考察」というタイトルの論文を早稲田政治経済学雑誌に発表した。本論文では、拙著『貨幣金融制度と経済発展--貨幣と制度の政治経済学』(有斐閣、2001年)で展開した理論をもとに、グローバル化がもたらす経済的意義を考察した。そこでは社会主義制度の崩壊や、中小企業や途上国の金融が、グローバル化の世界経済で情報とどのように関連してきたかなどの問題を検討した。
(3)その他に次の翻訳を行った。James Tobin (1998), Money, Credit, and Capitalを『トービン 金融論』として、またJoseph Stiglitz (2000), Economics of the Public Sector, Third editionを『スティグリッツ 公共経済学(上)(下)』として刊行した。
(4)本年度から始まった21世紀COEプロジェクト「開かれた政治経済制度の構築」の一環として、これまで進めてきた「インフォーマル金融と経済発展」の研究を進めている。