表題番号:2003A-005 日付:2004/05/10
研究課題V.ジャンケレヴィッチと小林秀雄の比較思想史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 原 章二
研究成果概要
「V.ジャンケレヴィッチと小林秀雄の比較思想史的研究」を進めるにあたって、まず、ジャンケレヴィッチの主著でありながら、これまでほとんど紹介すらじゅうぶんにされておらず、題名のみが喧伝されている『なんだかわからないこととほとんど無』の読解から手をつけた。同書は単に大部(全3巻で計四四七ページ)であるばかりでなく、題名が暗示するように、またジャンケレヴィッチのほとんど切れ目のない数ページにわたって続く独特の文章で書かれているために、ほとんど翻訳不可能(すくなくとも商業ベースにおいては)ということもあり、できるだけ忠実に、解釈を避けて、読んでゆくことをこころがけた。ジャンケレヴィッチの哲学的教養の背景は独特であるので(父親はロシア出のユダヤ人医師であり、またヘーゲルとフロイトのフランスへの翻訳紹介者でもあり、本人ジャンケレヴィッチはその影響を受けつつ、さらに若年時より教父哲学を好んで読んでいた)、この忠実な読みというのが、思いのほかむずかしかった。二〇〇三年度個人特定課題研究助成費を受ける以前から進めていたこの作業は、それでも全三巻のうちの二巻の途中まで、すでにすこしずつではあるが進行していたため、今回はそれをかなり推進することができ、第二巻の終わりまで到達することができた。その結果の一部は、二〇〇三年十二月発行の『教養諸学研究』第百十五号(早稲田大学政治経済学部)に掲載することができた。詳細はそこへ譲るほかはないが、研究の最終目標である小林秀雄との類縁性が、記述スタイルの明白な差にもかかわらず、次第に見えてきたと思われる。