表題番号:2003A-002 日付:2004/03/30
研究課題フランス文化政策の総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 沖田 吉穂
研究成果概要
「フランス文化政策の総合的研究」という研究課題に即して、この分野に関して主として3つの観点から研究を進めてきた。1)フランスの文化・芸術の振興にかかわる諸制度の特質を、他の国の制度や理念との比較において把握し整理すること。2)文化政策の領域ごとの今日的な展開を時事的かつ歴史的に位置づけること。3)法制・税制を中心に、制度の公共政策としての枠組みの記述と分析を進めること、である。1)については主に英米の博物館制度について、「スミソニアン機構」などすでに日本語でなされている研究や翻訳を吟味し、その一部は書評の形で報告した。また英語圏で盛んないわゆる文化経済学の展開に関しても、日本での研究成果も含め一定の理解を得た。2)に関しては歴史に関わる基本文献はかなり収集することができた。フランス文化省などのウェブ・サイトや様々の仏語雑誌論文等も情報源として有用であるので、その取り入れに努めた。3)はこの研究で最も重視している部分であり、フランスにおける公共サービスの概念とその施行者や受託者との関係のあり方は、文化政策に限定されない広がりを持っている。アソシアシオン法やメセナと財団をめぐる法制・税制については、最近の制度改正を含め骨格については整理したが、具体例の掘り下げがまだ十分でない。図書政策等をめぐって、フランス人インフォーマントと意見交換する機会も持ったが、芸術振興の政治文化と関わる側面まで描き出すには、もう少し時間が必要である。オープン教育センターでこの分野の講義を担当していることもあり、その機会を活用しながら記述と分析の制度を高めてゆきたい。