表題番号:2003A-001 日付:2005/02/22
研究課題先物プレミアム・パズルの解明:摩擦要因の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 秋葉 弘哉
(連携研究者) 大学院経済学研究科 大学院生 北村 能寛
(連携研究者) 大学院経済学研究科 大学院生 佐藤 綾野
研究成果概要
本研究では、国際金融論において未解決な問題(パズル)の一つとして周知の先物プレミアムパズルについて、その原因の一つであるといわれている摩擦要因に関して研究を行った。摩擦要因もいろいろと考えられるが、本研究においては外国為替市場における取引の際に発生する取引費用に注目した。先行研究によれば、この取引費用は注文加工費用、在庫保有費用、及び情報費用から発生するといわれている。そしてこの取引費用は、取引数量の変化を通じて為替レートに正の影響を及ぼすことが示されている。
 カバーなしの金利平価(UIP)からの乖離がこの取引費用のために発生しているという仮説をたて、先行研究において先物プレミアムパズルが確認されている16の高所得国について、1982年1月から1998年12月までのデータを用いて統計的な推定と検定を行った。経済学的な仮説は、UIP乖離があるバンドの上限あるいは下限を超えると、外国為替市場には裁定がはたらきUIPへ復帰する動きが発生するという仮説である。推定のために用いたモデルは非線形モデルの推定に用いられるSTARモデルであり、対称的なESTARモデルと非対称性を考慮できるLSTARモデルを特定化した。
 その結果、16カ国の標本中、4カ国でESTAR、11カ国でLSTARモデルによる乖離過程の近似が選択された。これらの結果が意味することは、UIP乖離は非線形過程に従うこと、そしてUIPからの乖離が大きくなればなるほど速いスピードでUIPに収束する力が市場にはたらくことである。また、バンド内ではUIPは必ずしも成立していないことも解った。さらに、非対称的な過程が選択された11カ国では、取引費用が先物プレミアムパズルの原因になっている可能性のあることが確認された。