表題番号:2002C-101 日付:2004/03/22
研究課題スペイン・カタロニアの伝統的石造民家マジアの修復・再生に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 入江 正之
研究成果概要
2003年2月から3月に亘って、短期間、集中的に、研究対象であるスペイン、カタロニア州タラゴナ県バッシカンプ行政区バンデジョス市ファッチェス地区のマジア残存遺構について、集落の全体の測量、及び集落最北部にあるマジア一棟に関して、精密な実測を行い、全体配置図、平面図、立面図、断面図として図書化し、各棟の配置およびその建築的規模を明らかにし、各部分の用途などに対する考察を行なった。その中で、ファッチェス集落全体がマジアの集合体で形成されたこと、農耕集落に見る付帯建築物と伝統的石造民家マジアとの関係を明らかにした。さらに、マジアの建築構成要素各部の工法について考察し、当該マジアの残存遺構の建築的概要を明らかにした。同時に、バルセロナ及びバンデジョスにおいて関連資料を収集し、現地技術者への取材を行った。
それらの成果を、2003年度日本建築学会大会(東海)講演梗概集三篇にまとめ発表した。
一つは研究対象であるバンデジョス市ファッチェス地区の集落の成立と、歴史的概要に触れ、崩落過程にある石造民家遺構集落の概要について述べた。その中で、バンデジョス市役所発行の文献をもとに、18世紀後半のバンデジョスと周辺のマジアの総数は76軒、その内ファッチェスは4軒であったことを明らかにし、また、ファッチェスの人口推移をグラフ化することによって、人口分布の最高値が1900年前後であることを明らかにし、その結果、マジアの立地数と人口推移の相対関係から、ファッチェスはマジアの集合体によって形成された集落であったと結論付けた。二つは当該集落内のマジアのうち、特に詳細に調査を行った1棟についての実測調査及び図書作成の過程とその概要について述べた。三つはマジア残存遺構について、地理的特質の視点から、また農業集落の付帯建築物の考察から、さらに実測調査を踏まえた工法的視点から述べ、マジアの建築的概要の一端を工法的観点からも明らかにした。