表題番号:2002B-016 日付:2004/03/23
研究課題エコマテリアルとしての土壁構法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 小松 幸夫
研究成果概要
土壁は日本古来の壁体構法であるが、建築生産の合理化とともにその施工量は減少し、近年では技術の伝承さえ危ぶまれている。一方では、地球環境保全や揮発性化学物質を用いた新建材によるシックハウスなどの問題に関係して、土壁構法の優位性が注目されている。
しかしながら、土壁構法の品質・性能は、従来、科学的・工学的に究明されたことはほとんどなく、現在でも左官職の経験と技能に依存するところが大きい。
本研究は、土壁構法の復興を目指すものであり、近年開発が目覚しい高度な建築技術と競合して適正な評価を得るための生産システムの構築を目的とするものである。
1.土壁生産の現状把握
(1)文献調査
日本壁に関する古典的な著書および壁土の性質に関する既往論文を調査し、土壁構法の原理・原則を整理した。
(2)左官職へのヒアリング調査
東京、京都、広島、熊本、秋田、滋賀の経験豊富な左官職(計7名)にヒアリングを行い、軸組み・木舞下地等の構法仕様、壁土原土の品質判定方法、調合の方法、練り土の仕込み方(水合わせ)、塗付け手順・方法に関する情報を収集・整理した。
(3)ドロコン製造施設の視察
埼玉、愛知、京都、愛媛、高知、広島、熊本(計8箇所)のドロコン製造施設(工場で練り土を製造し、販売する業者)を視察し、壁土の産地・入手経路、練り土の製造方法、生産量、販売・流通経路等に関する情報を収集・整理した。
(4)現場見学
住宅・店舗等の新築および修繕工事現場(多数)、広島國前寺の修復工事現場、埼玉県所沢再開発に伴う住宅・店舗の解体工事現場を見学した。
2.壁土原土の品質究明
埼玉・京都・熊本ほかの計5種の壁土原土について土質試験等を実施した。その結果、元素分析、土粒子の密度、土の粒度、土の液性限界・塑性限界、突固めによる土の締固め、土の強熱減量、土懸濁液のpHおよび電気伝導率などの試験が適用可能であることを確認した。特に、粒径分布曲線、流動曲線および締固め曲線は、産地による壁土原土の品質特性の差異を把握するのに有用であることを確認した。