表題番号:2002A-918 日付:2003/11/26
研究課題日本語を母語としない児童生徒への地域における支援ネットワークに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 日本語研究教育センター 教授 川上 郁雄
研究成果概要
本研究は、「日本語を母語としない児童生徒」の教育への支援ネットワークをテーマにした研究である。
これらの児童生徒には、日本語指導のほかに適応指導や教科指導、またカウンセリングなど、多様な支援
が必要となるが、そのような支援を行うためは学校現場だけでは十分とは言えない。それには教育委員会
や外部協力者、ボタンティア、家庭や地域の連携が重要となる。本研究では、宮城県仙台市と東京都新宿区
を例にその支援のあり方について検討した。
 宮城県仙台市では、宮城教育大学で筆者らが行っている「みやぎ児童生徒の日本語教育を考える会」を
例として取り上げた。これは小学校や中学校などの教員、地域のボランティア、大学の研究者などを参加者
として「事例検討」や教材開発を行う活動をしている会である。また、新宿区では本学大学院日本語教育
研究科の院生が組織している支援グループ「早稲田こども日本語クラブ」を取り上げた。これは新宿区教育
委員会と本学大学院日本語教育研究科が協定を結んで行っている「日本語教育ボランティア」制度の実際の
活動を支えているボランティア活動である。
 両事例の検討から、いくつかのことが明らかになった。それは教育行政、学校、地域などが連携をとる
場合のやり方やその内容である。支援を支えるためには行政との連携が必要であること、また指導の内容を
充実させるためには教員とボランティアの連携、そして大学などの研究者と現場を結ぶには研修の機会や
指導方法の研究、こどもの言語能力測定に関する観点と方法など専門的知識の必要な部分で連携することが
必要であることがわかった。
 今後はこの研究で明らかになった支援ネットワークの構築のやり方とその支援の内容面の成果をいかに
他の地域に広げていくかが重要で、それは今後の課題と言えよう。