表題番号:2002A-898 日付:2003/05/09
研究課題国際的な民主化支援と市民の態度変容-旧ソ連・東欧諸国における民主制の定着の観点から-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 上田 太郎
研究成果概要
 本研究の作業は、1)民主化支援策における市民教育プログラムの実態把握、2)市民の態度変容に対する効果の分析、に大別される。
 1)については、関係機関の報告および既存研究のサーベイをすすめ、米国、EU、国際機関などのドナーの政策指向、支援体制の動向を把握した。とりわけ、市民社会支援と制度構築支援の連携の問題を探る観点から、立法・司法など公的制度の支援と市民教育プログラムとの関係をめぐる政策論を考察した。また旧ソ連・東欧地域については、支援体制が市場化促進策から着手された経緯が、市民社会支援の展開に与えた影響について検討した。
 2)については、市民教育プログラムの効果に関する調査研究の知見を整理した。旧ソ連・東欧地域では政治的寛容の浸透度が依然として低く、変化も緩慢である一方、その醸成に市民教育の一定の効果が確認されている。また、地域社会の紛争解決プログラム、NGO支援など、市民社会を対象としたより広範な支援も、諸集団間の脅威認識を低下させることで、政治的寛容の醸成につながる可能性が示唆されている。今後は、各国の人権保障状況とあわせて、さらに検討を深める余地がある。
 作業の進展にともなって、民主制の定着の観点から、政治的態度と政党システムとの関係、とりわけ政治的寛容と反システム政党への支持との関係にも研究対象を広げつつある。成果物の公表にあたっては、この考察からの知見も盛り込むこととしたい。