表題番号:2002A-885 日付:2003/06/21
研究課題公共スポーツ施設のPFI導入に伴う定性的評価に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 助教授 間野 義之
研究成果概要
1.調査対象
【PFI整備事業】
①岡山市:当新田環境センター余熱利用施設整備・運営PFI事業
②岡山市:東部余熱利用健康増進施設整備・運営PFI事業
③加古川市:加古川市立総合体育館整備PFI事業
【公設民営事業】
①神戸市:神戸市立垂水体育館民間委託事業
②神戸市:(社)神戸レガッタ アンド アスレチック倶楽部 クラブハウス運営管理事業
③岡山市:岡山市立出石小学校施設暫定活用管理運営事業(※)
④神戸市:神戸市立生涯学習センター管理運営事業(※)
※「出石小学校施設暫定活用管理運営事業」「神戸市立生涯学習センター管理運営事業」については、施設見学のみを行った。

2.調査から得られた知見
2-1.公共スポーツ施設のPFI整備事業について
・民間企業のノウハウを利用:民間企業からの提案を、柔軟に受け入れることによって、サービスの向上、経費の削減が期待される。(岡山市東部余熱利用施設)
・地域スポーツクラブとの関係:3件ともに仕様書の中では、地域スポーツクラブ等との事業の提携・協力関係についての記載はない。インタビューでは、担当者からその可能性は期待したいような発言もあったが、事業遂行能力の評価が困難であり、現状では組織の実態も把握し難いため、仕様書や提案書の評価項目には加えられていない。(岡山市、加古川市)
・効率性を考えた既存意思決定システムの改革:事業の決裁期限の委譲や権限の集中を行うなど、庁内における意思決定の仕組みを統一し、事業手続きにロスが生じないようにした。(加古川市)
・運営・サービス提供の段階へ:審査・選定・設計・建設の段階を経て、今後、運営・サービス提供の段階へと移行するうえで、選定された事業者のマネジメント手法や運営能力、リスク管理能力、などを含めた総合的評価(定性的・定量的評価)が必要とされる。また、特に初期の段階においては、民間事業者が提供するサービスの内容と水準を監視し、必要に応じて効果的な介入を行っていくことが公共側に求められる。(岡山市、加古川市)

2-2.公共スポーツ施設及び文教施設の管理運営の民間委託事業について
・新しいサービスをより安く:地域スポーツクラブのセンター的な役割を果たし、また、多様なニーズに対応できる新しいサービスの提供、そしてコストの削減の可能性を探る。(神戸市)
・評価基準・目標設定の必要性:現段階では、委託運営に対する評価・判断基準はない。今後、民間委託をすすめるうえで、あるいは見直しを図るうえにおいても、質、量ともに公平かつ客観的な評価基準と目標設定の必要がある。(神戸市)
・受託団体の組織基盤強化および公益性:委託側としては、スポーツあるいは文教施設の管理運営において経験やノウハウを有し、また財政的にも安定した組織・団体であることが前提にある。また、公共施設運営の委託は、地方自治法により、公益法人であることが条件として定められている。(神戸市)
・管理運営受託者の範囲拡大:管理運営の委託について、その施設に対応した管理受託者の範囲拡大が求められる(公物管理法の見直し)。非営利・営利を問わず法人形態を柔軟に考え、NPO、第三セクターに限らず純民間事業者にも範囲を拡大すべきである。(神戸市、岡山市)
・会員限定から地域の核となる施設へ:会員限定の施設から、地域にある関係組織へネットワーク作りやコミュニケーションの場を提供する施設へと展開する提案がクラブから出されているなかで、これまで会員限定であったことが資金確保の障壁となっている。(神戸レガッタ アンド アスレチッククラブ)