表題番号:2002A-882 日付:2006/04/27
研究課題張力発揮時の協働筋における各筋の貢献度推定に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 福永 哲夫
研究成果概要
本研究では,張力発揮時の協働筋における各筋の貢献度を推定するために,異なる膝関節角度での足底屈筋力発揮を行わせ,張力発揮中の筋酸素化動態を腓腹筋内側頭(MG)及びヒラメ筋(SOL)について比較した.また,腓腹筋内側頭の筋酸素化動態と筋形状(筋束長)の関係も検討した.
健常男性7名(平均23.3歳)を対象とした.被検者は椅座位姿勢で,膝関節角度90°(K90)あるいは0°(K0)で静的足底屈運動を実施した.足関節角度はすべて90°とした.運動は,各膝関節角度で測定した最大足底屈筋力(MVC)の25%及び50%の静的足底屈筋力発揮を30秒間維持するものとした.測定項目は,近赤外分光法(浜松ホトニクス社製;NIRO-300)によりMGとSOLの組織酸素化指標(TOI),双極誘導法により表面筋電図(MG,SOL,腓腹筋外側頭;LG)を導出した.また,超音波B-モード法(アロカ社製;SSD-900)により筋形状(筋束長及び羽状角)を測定した.
運動中のTOIの経時的変化をみると,MGでは,K0条件で運動の持続に伴い緩やかに低下するのに対し,K90ではほぼ一定であった.一方,SOLでは,K0,K90両条件共にほぼ一定であった.各筋の筋電図積分値(K0におけるMVCの値で標準化)は,MG及びLG共にK0に比べてK90で低くなるのに対し,SOLでは両条件においてほぼ同値を示した. MGの筋束長は,安静時,25% 及び50% MVC発揮時,いずれにおいてもK90よりK0で高い値を示した.筋束長とTOIの関係を見ると,K0条件においては,筋力発揮に伴う筋束長の短縮に伴いTOIが低下する傾向が見られたのに対し,K90条件では筋束長及びTOIの変化はいずれも小さかった.
以上の結果より,異なる膝関節角度での足底屈筋力発揮において,同じ相対強度であってもMG及びSOLの筋酸素化動態は異なる様相が見られた.それは筋の活動水準の違いが関与することが示唆され,MGにおいては,筋酸素化動態の違いは筋形状と関連することが推察された.また,足底屈筋力発揮に対して,SOLでは両条件で同等の貢献であったことが示唆された.