表題番号:2002A-860 日付:2003/05/09
研究課題共有仮想空間における間合いの創出に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 上杉 繁
研究成果概要
インターネットの普及に伴い,離れた場所にいても人と人とが必要な情報を共有できるようになってきた.しかし一方で,互いの間における信頼感や安心感の創出には,人と人が直接出会わないとうまくいかないことが指摘されており,このことがコミュニティ支援にコンピュータメディア技術を活用する際の大きな問題にもなっている.このような問題が発生する要因として次のことが挙げられる.すなわち,対面時のように同じ場所(空間)におけるコミュニケーションでは,互いの身体性(身体の働き)を介して存在そのものが伝わることで,コミュニケーション可能な場が創出され,それによってコンテキストの共有が起きると考えられている.しかしながら,これまでのコンピュータメディア技術は,異なる空間において,そのような場を創出できるインタフェースの開発が遅れているといえよう.そこで著者らは,この問題を解決する手がかりを得るために,離れた場所間において,互いの身体性を強め合うことが可能なインタフェースの設計手法についてこれまで検討してきた.その結果,共存在感の創出には,行為を介して自身と相手との関係を創りながら,互いを共通の空間に位置付けることが必要であることが分かってきた.また,これにより,相手との距離感や一体感なども創出されると考えることができる.
以上のような観点から,本研究では,異なる空間で互いが同じツールを共有して,それを共同で操作すると同時に,その身体的行為の現場をリアルタイムに映像表現し,仮想空間上にそれぞれの現場における行為を統合することで,共存在感を創出させる二重表現的な手法について検討することにした.
具体的には,回転盆(“Lazy Susan”)を複数人で囲んだコミュニケーションの場を想定したインタフェースシステムを開発した.そして,本システムを利用したコミュニケーション実験を行い,相手の仮想的な身体と実体のテーブルとのインタラクションにおいて,相手の仮想手に存在感が創出されるという興味深い現象を確認し,共存在感の創出支援や対話支援における有効性を示した.さらに,本システムを拡張し,遠隔地間での共同作業を支援するためのプラットフォームとしての活用について若干の検討を加えた.すなわち,積み木を用いたテーブル上での作業やホワイトボード上での共同描画などにおいて,本システムを用いることで,互いの身体性を強められ,共存在感が創出されやすくなることを示した.