表題番号:2002A-855 日付:2004/02/21
研究課題巨大磁気誘電率物質の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 勝藤 拓郎
研究成果概要
 六方晶RMnO3(R=Y, Lu etc.)は、誘電率が磁性と強く結合しており、反強磁性転移温度で誘電率が大きく変化することが知られている。しかし、反強磁性相互作用が強いために磁化率が小さく、その結果試料に磁場をかけても誘電率はほとんど変化しない。本研究では、このRMnO3に様々なタイプのドーピングを施し、誘電率の磁場依存性(磁気誘電率)を増大させることを試みた。
 その結果、Rサイト(3価)をZr(4価)で置換することによって、磁化率が低温で増大し、それに伴って磁気誘電率 (magnetocapacitance)も増大することがわかった。例えば、Y0.8Zr0.2MnO3においては、誘電率は7 Tの磁場下で0.4%変化する。ところが、この試料を還元すると磁化率もmagnetocapacitanceも減少する。すなわち、還元によってドーピングの効果が打ち消されることがわかった。もし、3価のRを4価のZrへの置換がMnサイトへの電子ドーピング(Mn3+→Mn2+)と考えるならば、還元によってその効果はさらに増大するはずである。したがってこの実験結果は、Zr置換は単純なMnサイトへの電子ドーピング効果ではないことを意味する。
 さらに、Mnサイト(3価)をTi(4価)で置換した場合でも、同様に磁化率が低温で増大し、magnetocapacitanceも増大することがわかった。RサイトのZr置換とMnサイトへのTi置換が同様の効果を示すことから、これらの効果は「フラストレートしたスピン系への乱れの導入による磁気モーメントの発生」と考えられることを示唆している。