表題番号:2002A-837 日付:2004/03/24
研究課題高次脳機能障害の評価法と認知リハビリテーションに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助教授 坂爪 一幸
研究成果概要
 【目的】脳損傷後の高次脳機能障害のなかでも,遂行機能障害は前頭葉損傷と関連の深い最高次の脳機能障害である。小児の遂行機能の発達的変化や障害は不明な点が多い。小児に適した適切な遂行機能の評価課題がないことが原因である。本研究では,小児に負担が少なく馴染みやすい課題であるTinkertoy Testを用いて,小児の遂行機能の発達状態や遂行機能障害の臨床的評価課題としての有用性を検討した。
 【対象】健常児74名(平均年齢4.5±1.2歳)と発達障害児41名(平均年齢4.1±1.5歳)を対象にした。
 【方法】遂行機能の評価課題としてTinkertoy Testを施行した。また遂行機と視覚構成能力および言語能力との関係をみるために,大脇式精薄児用知能検査(視覚構成課題),絵画語い発達検査(言語課題)を併せて実施した。
 【結果】Tinkertoy Testの得点は性別,精神発達遅滞の有無,年齢,利き手,自閉性障害の有無との関連が強く,言語発達遅滞の有無との関連は相対的に弱かった。また,注意欠陥多動性障害の有無とはほとんど関連がなかった。年齢が4歳以上,男性,右利き,精神発達遅滞・自閉性障害・言語発達遅滞がない場合に得点は高くなり,年齢が3歳以下,女性,左手利き,精神発達遅滞・言語発達遅滞・自閉性障害がある場合に得点は低くなっていた。健常児・発達障害児両群においてTinkertoy Testの合計得点と大脇式知能検査のIQ得点および,絵画語い発達検査の評価点との間に有意な相関はなかった。
 【考察と今後の展望】Tinkertoy Testの解決に必要な能力は,視覚構成能力や言語能力とは異なっていることが示され, Tinkertoy Testが遂行機能の評価課題として有用である可能性が示唆された。今後は,Tinkertoy Testの結果の詳細な分析とリハビリテーションにおける治療課題としてのTinkertoy Testの可能性を検討していく予定である。