表題番号:2002A-836 日付:2003/05/21
研究課題唐末沙陀突厥史の基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助教授 石見 清裕
研究成果概要
 沙陀族はテュルク系民族といわれ、唐代に中国山西省に移動し、唐末に首領の李克用が現れてから強大となり、この勢力から五代5王朝のうちの後晋・後唐・後周の3王朝が形成された。これほど、中国史・東アジア史に重要な役割を演じた沙陀族であるが、これまで研究は大きく遅れている。その理由の1つは、唐末・五代の社会状況が反映されて、史料が混乱している点にある。そこで、本研究では、『新唐書』沙陀伝を中心に、各史書に散見される沙陀関係史料を整理した。この基礎的作業は、現在も一部続けている。
 それと同時に、1989年に中国では先述李克用の「墓誌」が発見されたので、それを学界で史料として活用できるよう、テキスト化作業を行った。同墓誌は、すでに拓本写真が公表されてはいるが、その写真はあまりに縮小され、不鮮明なため、それから釈文を行うことは不可能である。そこで、2002年8月12日~19日の期間、山西省を調査したところ、代県の文廟(山西省博物館を兼ねる)に同墓誌の原石・原拓本ともに保管されていることがわかり、幸いにしてそれらを実見・調査することができた。
 墓誌は、縦横それぞれ93cm、全39行、1行42字の大作で、書体は基本的には楷書体であるが、異体字がしばしば用いられ、そのために釈文は困難を極めたが、原石の調査もできたので、テキスト化に成功した。帰国後は、その解読と、編纂史料との比較・校訂を行った。なお、山西省では、李克用の墓と、周囲の地理も視察・調査ができ、大変有意義であった。
 李克用墓誌の調査は、森部豊氏(筑波大学)と共同で行った。現在、すでにその訳注研究は完成し、森部氏と共著で、下記のとおり発表の予定である。