表題番号:2002A-835 日付:2003/05/27
研究課題戦前の女子大学設立構想における家政学の位置付けに関する一研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 湯川 次義
研究成果概要
本研究の課題は、次の二点であった。第一に、女子大学設立構想における家政学の目的・理論、学科構成・内容及び諸外国からの影響などを考察し、その特質及び位置付けを明らかにする。第二に、大学段階での家政学の研究・教育が行政サイドや大学人(男性)からどのようにとらえられていたかを明らかにする。
この課題を明らかにするための資料調査として、①日本女子大学・お茶の水女子大学・奈良女子大学所蔵の公文書、②文部省などが保存した公文書、③三大学の同窓会紙、④戦前の家政学関係雑誌、⑤戦前の教育雑誌、⑥家政学研究書、⑦その他、を計画した。
具体的な作業としては、①の三女子大学附属図書館所蔵資料、②国立公文書館所蔵文書、③三女子大学同窓会紙、⑤教育雑誌及び⑦『教育審議会会議録』についての資料調査・収集を行った。特に、奈良女子大学附属図書館と同窓会(佐保会)事務所での資料調査で、大学設立関係資料を多数収集できたことは、今回の資料調査の最大の成果であった。
主要な研究成果としては、第一の課題に関連して、東京・奈良女子高等師範学校の大学設立構想における家政学の学科構成・内容が明らかになった点をあげることができる。その中で、①奈良女子高等師範学校の家政学部構想立案に関する詳細な過程が把握できた点、②東京女子高等師範学校の家政学部設立論議において、家政学を学部にするための学問的蓄積が十分ではなく、また学科やカリキュラム構成も準備不足であることが自覚された点、③家政学の位置づけが三校で相違があった点、などが究明できたことは大きな成果であった。さらに、第二の課題に関しては、女子大学・家政学科を容認した教育審議会における家政学をめぐる議論の詳細を明らかにできた点を成果としてあげることができる。
 以上の成果を著書『近代日本の女性と大学教育 ―教育機会開放をめぐる歴史―』(不二出版、2003年6月刊行予定、全730頁)に取り入れ、その内容の充実をはかることができた。