表題番号:2002A-834 日付:2005/11/17
研究課題小説教材の新しい学習指導法に関する研究-高等学校での実践に即して
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 町田 守弘
研究成果概要
高等学校の国語科教育において小説教材をどのように扱うかという問題に関しては、多くの先行研究および実践がある。特に教科書の「定番教材」と称される小説教材は、教師用の指導書その他の場所において多様な観点から様々な指導法が提案されている。今回の研究では、2003年度から実施に移された新課程の選択必修科目「国語総合」に焦点を当てて、小説教材の傾向を確認しつつ、その効果的な指導法に関する実践的課題を明らかにしたうえで、具体的な指導法を提案することを目標とした。
まず「国語総合」の教科書教材の調査を試み、「長さ」の面から短くて1~2時間の授業で扱うことができるものに着目した。「国語総合」の教科書は10社から20種24点発行されているが、教科書のページ数で6ページ以内の小説教材としては次のような教材が収録されていた。なおカッコ内は教科書のページ数である。武田泰淳「信念」(3)、菊池寛「形」(4)、河野多恵子「少女」(4)、干刈あがた「レバー・ストーン」(5)、江國香織「子供たちの晩餐」(6)、葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」(6)。今回の研究ではこの中から「少女」を取り上げて、その指導法について具体的な提案をまとめることができた。この研究成果に関しては、「短編小説の学習指導論-河野多恵子『少女』に即して」(『解釈』2003.5-6)という論文において報告する。
 続いて、すべての「国語総合」の教科書に共通教材として収録された芥川龍之介の「羅生門」を取り上げることにした。今回すべての教科書に収録されたという事実はきわめて特徴的である。各社の教師用指導書を検討して、教材化の意図を比較することによって、「羅生門」が何故共通教材としての位置を獲得したのかを考えてみた。小説の基本的な読み方に関する学習指導を展開することができる教材として、「羅生門」は位置付けられている。例えば学習指導要領の「読むこと」の指導事項として掲げられた「文章に描かれた人物、情景、心情などを表現に即して読み味わうこと」という点について、「羅生門」を通して指導することができる。これまでの実践の歴史の中で定着してきた方法によって、安定した学習指導を展開できることが、共通教材としての位置を確かなものにしている。
 今回の研究では、多くの先行研究・実践を整理しながら「羅生門」の学習指導事項とその指導法をまとめることによって、小説教材の学習指導に関するいくつかの課題を発見することができた。それを踏まえて、一つの学習指導法を提案してみた。この研究成果に関しては、「『国語総合』で小説教材をどう扱うか-総合性に配慮して」(『早実研究紀要』2003.3)という論文において報告した。