表題番号:2002A-833
日付:2004/05/10
研究課題両生類等における造血制御解析法の実験的確立
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 教育学部 | 教授 | 加藤 尚志 |
- 研究成果概要
- 本研究では、代表的な外温生物である両生類アフリカツメガエル(Xenopus laevis laevis)を実験動物とし、新たな造血制御機構の探索を展開するために必要となる、血球系細胞の基礎的解析手法を検討した。
成体アフリカツメガエル末梢血を心採血し、塗沫標本ををMay-Grünwald-Giemsa染色、Hadji-Azimiら(1987)の分類に従って、各種血球の鑑別分類を行った。一方、臨床で用いられている自動血球計数装置(Sysmex F802)による末梢血球数の自動計数も検討したが、両生類のインタクトな血球の分別測定には粒度分布パラメータの設定や、血球前処理工程などに尚も工夫が必要であった。従って浮遊血球試料についてはcrystal violet染色血球をNeubauer血算盤で顕微観察により測定することとした。Percoll密度勾配法を実施し、赤血球と白血球は明確な分離が可能となった。また脾臓、肝臓、骨髄より細胞を回収し、染色標本で血球系細胞の存在を検討したところ、骨髄には脂肪が多く血球系細胞が少ないが、脾臓、肝臓には血球系細胞が多く見出された。すなわち、アフリカツメガエルの主たる造血巣は骨髄でなく、通常は脾臓や肝臓が造血の場であることを確認した。in vitroにおけるアフリカツメガエル血球系細胞の培養基礎条件を検討したところ、ウシ胎仔血清存在下、哺乳類で用いる細胞培養液を浸透圧調整後(7/9希釈)の培地によって、コロニーアッセイで必要とされる、少なくとも数日程度の培養が可能であることを確認した。外部環境に応答して造血系が変化する仕組みを解析する端緒として、アフリカツメガエルの末梢血球数変動の温度感受性を調べたところ、低温飼育後のアフリカツメガエルの末梢血球は半減することを確認した。
以上の一連の研究は、生物における新たな造血制御系を探索を想定して、両生類による造血解析モデルの基礎的検討であり、今後、多様な実験系を確立する必要がある。この過程で解明される両生類造血の仕組みは、基礎生物学にとっても重要な知見を生むものと考えられた。本成果を基盤として、遺伝子組換えヒト造血因子への応答試験を含めた具体的な展開を予定している。