表題番号:2002A-815 日付:2003/05/04
研究課題ベルギーおよびカナダの連邦制度における芸術公共政策の枠組みと運用の社会学的考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 第一文学部 専任講師 藤井 慎太郎
研究成果概要
 フランダースおよびケベックは、ベルギーおよびカナダにおいて根強い分離独立運動を抱え、戦後は相当程度の自治権拡大を獲得する一方で、1980年代以降、すぐれた舞台芸術家を多数生み出してきた。芸術は他者性と差異を志向する運動であり、また芸術家は移動性の高い集団を伝統的に構成しており、コスモポリタニズムは芸術における大原則であったし、現在においてもそうであるといえる。その芸術が、ナショナリズム運動に揺れたフランダースとケベックにおいて開花したのはなぜなのか。本研究は、フランダースおよびケベックの両地方政府が、言語・文化政策を両地域の「国民国家化」の要として認識し、芸術に対しても相当な予算と労力を投入し、芸術教育・創造環境を整備してきた事実との関連において、その理由を理解しようとするものである。
 2002年度は、早稲田大学特定課題研究助成によって、資料収集をおこなうと同時に、2003年2月にブリュッセルおよびフランダース地方で1週間の予備調査をおこなうことが可能になった。ブリュッセル、ゲント、アントワープにおける公立劇場・文化施設を視察するとともに、ブリュッセルのフランダース演劇研究所およびベローヌ舞台芸術会館にて資料収集と専門家に対する聞き取り調査をおこない、フランダース地方における文化政策の形成過程について、当地でなければ入手できない貴重な情報を得ることができた。
 2003-4年度は、文部科学省科学研究費を得て、本研究をさらに推進するとともに、成果を論文にまとめ、発表する予定である。