表題番号:2002A-808 日付:2004/03/31
研究課題アメリカにおける商業モーゲージ二次市場の生成と担保制度の新展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助手 青木 則幸
研究成果概要
 当研究の目的は、「アメリカにおける収益型担保制度が、いかなる取引構造を前提に、選択されてきたのか」という点を明らかにすることである。これは、収益型担保制度と同制度が予定すべき取引実態の関係を明らかにするための基礎研究である。
検討内容を要約すると以下のとおりである。
 第一に、アメリカの収益型担保制度の現状を検討した。同制度は、賃料譲渡に基づく担保権(の拡張)を実体権として、3つの執行手続を認める制度であった。すなわち、①債務不履行の発生後、モーゲージ権者がただちに(=通知のみによって)不動産収益を回収し始めることができる。②債務者が目的不動産の占有・管理を放棄している場合、ないし、債務者との合意が成立する場合、債権者は(自ら、または、代理人によって)「占有を有するモーゲージ権者」として、目的財産の占有を開始することができる。③目的不動産の管理を設定者から第三者ないしモーゲージ権者に移し、適正な管理を図りつつも、裁判所の監督の介入によって、過重な負担となりがちな「占有を有するモーゲージ権者」としての厳格な責任を回避しうる手続き(=収益管理制度)。
 第二に、かかる収益型担保制度が、いかなる取引実態(の展開)の中で形成されてきたのか、という点を検討した。同制度は、1960年代半ば以降の商業用不動産金融市場の影響を受けて形成されたというべきである。すなわち、モーゲージ貸付の法形式を用いるにもかかわらず、目的不動産の実行としての売却によって得られる換価金の100%ないしそれ以上の金額を被担保債権とする取引である。かかる取引実態は、1980年代のブーム期を経て、証券化(CMBS)という形で定着した。投資のメカニズムとしての性質を有するモーゲージである。