表題番号:2002A-806 日付:2005/04/25
研究課題1950年代の日本女性の「底辺」-増田小夜の『芸者 苦闘の半生涯』
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助教授 ゲイ ローリー
研究成果概要
増田小夜の自叙伝『芸者 苦闘の半生涯』(平凡社1957年初版、1995年改訂版)の拙訳、
『Autobiography of a Geisha』は2002年5月にColumbia University Press(米国コロンビア大学出版会)
の審査を通り、2003年3月に出版されました。すでに英連邦におけるペーパーバックの出版もVintage UKで決定されています。
審査を通ってから出版までの10ヶ月間、解説や注の下調べをしているうち、助成費で、増田さんが芸者をしていた諏訪温泉へ
二泊三日の調査・研究旅行に出かけました。増田さんの自伝に出てくるいくつかの場所を探し当てて、写真をとり、
写真6枚が訳の本文と後書きの間に置くことができました。幸いなことに、上諏訪は第二次世界大戦中空爆をまぬかれ、
昔ながらと思われる花街がいまだ姿を完全に消していません。

助成費で地図の作成も専門の出版業者小宮山清氏に依頼し、実にきれいなものができました。日本全土の地図の他に、
増田さんが生まれ育った、芸者や後に料理屋の女中をしていた信州地方や、戦時中移り住んだ千葉半島の拡大地図も作成し、
訳の解説(前書き)と本文の間に置きました。

翻訳とは別に、「1956年「売春防止法」の一考察ー売春婦たちの反対を中心にー」といった論文ができました。
今までの売春防止法研究と違って、当時、実際売春をしていた女性たちの声に耳を傾くことを重視し、
新吉原女性保健組合が出版していた新聞『婦人新風』の復刻版を購入し、論文に数箇所を訳し引用しました。
最終稿を校正して、年内『U.S.-Japan Women's Journal』(城西大学国際文化教育センターが出版している
日米女性ジャーナル)で公表する予定です。

2003年3月