表題番号:2002A-804 日付:2003/04/28
研究課題ドイツ語の心態詞の意味・機能と音声的特徴との関わり
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 専任講師 生駒 美喜
研究成果概要
ドイツ語の心態詞は、日本語の終助詞(~よ、~ね)と同様、話者の微妙な意図・ニュアンスを表す語とされ、これまで意味論、統語論の立場から様々な研究がされてきた。一方、音声学の領域においては、イントネーションやアクセントなどの韻律的特徴が、話者の意図を表す機能を担っていることが明らかになってきている。では、ドイツ語の心態詞と韻律的特徴の間にはどのような関連があるのだろうか。実際の談話音声における心態詞の音声的側面は、意味との関連性が指摘されながらも、客観的な分析はされていない。本研究課題においては、ドイツ語の心態詞の意味・機能、および音声的特徴(アクセントの有無)をこれまでの先行研究を基に整理し、日本語をはじめとする他の言語に見られる心的態度を表す品詞と比較を行い、さらにそれらの音声的、特に韻律的特徴との関連性を実験音声学的手法を用いて明らかにすることを目的とし、その研究の一環として、これまでの先行研究をまとめ、心態詞の分析を行った。まず、ドイツ語の心態詞や、英語や日本語における同様の機能を持つ品詞についての先行研究を収集し、これらを基に、ドイツ語をはじめ、言語一般に現われる話者の心的態度(モダリティ)について、これまでの先行研究をまとめた。さらに、ドイツ語の韻律的特徴について、先行研究を基に意味・機能との関係を整理した。次に、ドイツ語の心態詞について、実験を行った。その際、心態詞を含む様々な文を、先行研究を基にまとめた意味・機能に相当する状況文に当てはめて朗読した音声を音響分析し、発話文全体の長さ、ピッチ、強さを測定し、考察を行った。その結果、心態詞の意味・機能には各々特定の音声的特徴が見られ、聞き手は部分的に音声を手がかりにその意味機能を知覚していることが明らかになった。今後の課題としては、心態詞についてより一層客観的な分析を行うため、自然発話や、自然発話をある程度想定した対話音声(ラジオなどのインタビューや、演劇、ドイツ語教材ビデオ等に用いられるディアローグ)を分析することが望まれる。更に、他の心態詞についても、引き続き同様の研究を行い、心態詞の意味機能と音声との関連を一層明らかにしたい。