表題番号:2002A-553 日付:2004/04/13
研究課題「認知」と「感性」を表す英語語彙の歴史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 森山 秀
研究成果概要
本研究は、先行課題(番号2001A-106)を発展・深化させることを目的とする。古期英語の基本的な意味領域である「食物」および「言語」に属する語群について、これらが具体的な指示物にのみ用いられるかのような意味記述を行ってきた従来の辞書項目を再検討した。トロント大学古期英語データベースCD-ROMを駆使して、関連語彙の言語データの収集を行った。

本研究では、新たに古期英語の意味領域のなかで比較的抽象度の高い知性や心理状況を表す語彙を分析の対象に加えることとした。また、今回は英語語彙の歴史的変遷(主にメトニミーなどの意味変化の記述)を視野に入れるために、現代英語のコーパスをリサーチ・ツールに加えた。本研究の対象となったのは、二つの性格の異なるコーパスである。British National Corpus (BNC)は主に語彙使用頻度とコロケーションの分析に用いた。フレーズあるいはコロケーションは古期英語にも存在するが、口語の言語資料がないこと、また、多くの現存のテキスト(特に散文)は、ラテン語の文書の翻訳あるいは抄訳であること、の2点において、現代英語のフレーズ群と同一視することはできない。そこで、両者の統語的・意味的な性格の違いの分析を行う必要があった。BNCからはできるだけ多くの現代英語コロケーションを抽出する目的で、コンピュータによる自動抽出のメカニズムの構築を試みた。成果は、下記の学会発表でその一部を公表し、専門家からの意見を得ることができた。現時点で完成はしていないが、改良を加えてより効率よくかつ正確な抽出が可能なシステムに切り替える予定である。

もうひとつの重要な資料は、British Component of the International Corpus of English (ICE-GB)である。こちらは、コーパスの分量はBNCに比して少ないが、それぞれに詳細な品詞・文法・統語タグがほどこされているため、ICE-GB自体が研究の対象となった。目下、コロケーションの自動抽出メカニズムの構築を続行している。本年度中に改良版の完成を目指し成果の一部としたい。また、古期英語のコンポーネントについては、トロント大学古期英語辞典のF項までがCD-ROMで刊行されたので、これらを検討したうえで、研究論文として発表する予定である。