表題番号:2002A-542 日付:2004/04/06
研究課題定常流型補助人工心臓の軸シールに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 富岡 淳
研究成果概要
軸シール部の冷却・洗浄を目的に開発された「Cool-Seal-System」を搭載した定常流型補助人工心臓をさらに小型化・長寿命・高信頼とするためには,血液による摩擦損失トルクの上昇,密封流体およびC.W.(クーリングウォータ)の漏洩の問題を解決する必要がある.そこで,本研究では,定常流型補助人工心臓用メカニカルシールの摺動面粗さに注目し,Ra=0.009,Ra=0.088,Ra=0.170のシートリング,およびRa=0.093のシールリングを用いて,摺動面の表面粗さが人工心臓用メカニカルシールの潤滑特性に及ぼす影響を,トルク特性,密封特性の両観点から調査することを目的とした.
メカニカルシールの漏れ量に関しては,血中たんぱく質の影響により血液をそのまま用いての測定が困難なため,血液相当液としてMgCl2水溶液を用い,チャンバ内圧力100[mmHg],回転数3000[rpm],マグネット反発力3.0[N]とし,C.W.側(純水中)に漏れ出したMg元素濃度をイオンクロマトグラフィ-により測定した.トルク特性に関しては,チャンバ内にHt値30%のブタ血液,C.W.に純水を用いて,回転数を1000~8000[rpm],マグネット反発力3.0~5.0[N]に変化させ,摺動面にかかる摩擦損失トルクの大きさを測定した.
実験結果より,シールの漏れ量は摺動面粗さに依存し,粗さの増加とともに漏れ量も増加し,Ra=0.170での漏れ量は約0.16[ml/3h]であった.摩擦損失トルクの最低値は表面粗さが最も大きいRa=0.170で最も低くなり,その大きさは約2.5[mN・m]であった.これにより,定常流型補助人工心臓用メカニカルシールの潤滑特性向上には,摺動面の表面粗さを考慮した設計が重要であることがわかった.