表題番号:2002A-540 日付:2004/05/18
研究課題室内環境が知的生産性に与える影響に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 田邉 新一
研究成果概要
室内環境が知的生産性に与える影響を評価するツールを開発することを目的とし、被験者実験により知的生産性を精度よく評価できる手法の確立を行った。
 知的生産性により明確に影響を及ぼしやすいと考えられる光環境を対象とし被験者実験を、早稲田大学に設置されたマルチメディアスタジオにて行った。実験環境条件は、机上面照度をJIS Z 9110の適正照度基準内である800lxに照度を設定した条件と、暗くて作業に適さないと考えられる3lxに設定した条件とした。また、作業の学習効果を除くため、800lxで練習条件を設けた。被験者は、健康な大学生年齢の矯正視力0.7以上の男性14名とした。
 知的生産性を評価する手法として作業成績だけでなく疲労度に着目した。疲労の測定には、主観評価に加え、音声やフリッカー値を用いた客観評価も行った。また、近赤外線酸素モニタ装置を用いた脳内酸素代謝測定も行った。
 作業成績では、環境条件間に有意な差は認められなかった。疲労の主観的測定である自覚症状しらべの評価では、3lx条件下で作業による総合訴え率の増加が大きく、精神作業・夜勤型に特徴的な疲労構造が認められた。音声を用いた疲労の客観的測定結果としては、「が行」「ぱ行」のリアプノフ数の標準偏差の変化率が、3lx条件で作業後有意に上昇し増加量が多かった。フリッカー値は、3lx条件で作業後に有意に減少したが、環境条件間比較では有意差が認められなかった。近赤外線酸素モニタを用いた脳内酸素代謝の測定では、3lx条件で、加算作業が朗読作業より有意に酸素化ヘモグロビン濃度の増加量が大きかった。加えて、タスクアンビエント空調システムに関する被験者実験や、室内空気質を対象としたコールセンターにおける現場実測を行い、室内環境質と知的生産性の関係の検討を進めている。