表題番号:2002A-539 日付:2005/11/06
研究課題キラルな多目的鍵中間体、2-アルキリデンTHF誘導体の創製と天然物合成への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 中田 雅久
研究成果概要
アセト酢酸エステルのジアニオンとヨード環状硫酸エステルの反応を検討した。これまでにカップリング体が得られない原因として、ハロゲンー金属交換とそれに続くβ脱離がカップリングに優先して起こっている可能性が考えられた。そこで、ジアニオンをハロゲンー金属交換を起こしにくいとされる銅試薬に変換し、反応を検討した。また、Cu(I) イオンの存在下におけるジアニオンの反応、カウンターカチオンを希土類金属イオンに変えた、より反応性の高いジアニオン種の検討、を行った。しかしながら、いずれの場合も原料の消失は認められるものの、カップリング体は得られなかった。このことからヨード環状硫酸エステルはカップリング反応には不適で、有機合成化学的に用途の広いエポキシドへ変換し、応用することが適切であることが判明した。
また、これまでにアセト酢酸エステルのジアニオンとエピブロモヒドリンの反応により、2-アルキリデンTHF誘導体のワンポット合成に成功している。2-アルキリデンTHF誘導体は、そのアリルーアルケニル構造からClaisen転位により、シクロヘプタノン誘導体に変換できると期待された。光学活性なシクロヘプタノン誘導体はアルツハイマー病治療薬のリード化合物として期待されているエリナシン類の共通中間体として有用である。そこで、光学活性なエピブロモヒドリンを用い光学活性な2-アルキリデンTHF誘導体を合成し、研究計画にあるような解決策の下、Claisen転位を検討した。しかしながら、基質はpush-pullアルケンの構造を有するため、アルケンのシスートランス異性化の制御が難しく、立体選択的な転位反応の実現は困難であることがわかった。
そこで、エリナシン類の共通中間体に変換可能なキラルビルディングブロックスの構築法として、メゾ-2-アルコキシメチル-2-メチル-1,3-シクロヘプタジオンの不斉触媒による不斉還元を検討した。その結果、パン酵母を用いた不斉還元により、収率90%、99%以上のエナンチオ選択性でモノ還元体が、また、CBS触媒を用いた不斉還元により、同様の収率、エナンチオ選択性でジオールが得られることがわかった。また、基質として5員環、8員環も同様な結果を与えることもわかり、現在報文を作成中である。