表題番号:2002A-534 日付:2004/03/07
研究課題ラーベス相合金における階層間構造変化の結晶学的特徴
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 小山 泰正
研究成果概要
本研究では、主にTi-30at.%Cr合金における(bcc→hcp+C15)反応での構造変化に注目し、その結晶学的特徴を透過型電子顕微鏡を用いて調べた。具体的には、この反応において出現する準安定平衡相および平衡相の結晶学的特徴、ならびにその出現の順序について明らかにした。まず、構造変化は、bcc→bcc+Zone→bcc+LBS→bcc+CSS→bcc+CSS+hcp→bcc+hcp+NSR→bcc+hcp+C15→hcp+C15の7段階で進行することが示された。ここで、ZoneはCr一原子層から成るゾーン構造、LBRは局所的なbct領域(local bct region)、CSSはCr 1原子層とTi 3原子層が交互に配列した化学的縞状構造(chemical stripe structure)、そしてNSRはC15型構造に類似した構造を持つ、大きさ2nm程度のナノメーターサイズ領域(nm-size region)である。この構造変化での特徴については、hcp領域がCSSを核生成サイトとして、またNSRはhcp領域を取りまくように出現することである。特に、NSRはC15型構造形成の前駆段階に対応し、ラーベス相形成に重要な役割を果たすことが示された。また、最終的に得られた(hcp+C15)状態は非常に微細な組織を有することも明らかとなった。
上述の実験結果を踏まえて、Ti-40at%Cr合金を用いbccおよびC15型構造の結晶方位関係を調べた。その結果、形成の初期段階における二十面体原子クラスターの出現を示す、7つの方位関係の存在が明らかとなった。そこで、Ti-30at%Cr合金におけるNSR領域を詳細に調べたところ、この形成は二十面体対称性を有することが分かった。よって、ラーベス相の形成は二十面体クラスターを介して生じることが結論された。