表題番号:2002A-530 日付:2005/03/23
研究課題全テンソル型有効浸透率による天然フラクチャ-型貯留シミュレーション
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 在原 典男
(連携研究者) 理工学部 助手 Sutopo
研究成果概要
 本研究は油層シミュレーションのための混合有限体積要素(Mixed Finite Volume Element, MFVE)法に関するものであり、特に、不均質貯留層における2相流体の挙動シミュレーションの計算精度と効率について研究し、それらの成果を取り纏めた。
 近年の油層シミュレーション技術開発における目標の一つは不均質層に対応した全テンソル型浸透率の導入である。MFVE法はは、圧力と流速を同じ精度で同時に計算する手法であり、有限差分法に極めて近く、数値モデル化が容易である。MFVE法は多相流動式に系統的かつ軽易に適用でき、不均質な異方性全テンソル型浸透率を含む複雑なシミュレーションにおいても高精度の計算が可能である。本研究で開発されたモデリング手法は、ブラックオイルや多成分系モデルにも適用が可能であり、その有効性は高い。また、本研究で実証した2相流動方程式の逐次解法および演算子分割法は、計算時間の削減のための有力な手法である。
 多相流モデルとして、非ミシブル非圧縮性流体による非単位易動度比の置換についてMFVE法モデルを構築した。フラクショナルフローおよび全圧力による定式化の結果、楕円型の圧力式および放物型の飽和率式が得られる。この連立式をMFVE法によって分離・線形化し、逐次的に解いた。飽和率式の退化には摂動法により対処した。一般に、圧力は飽和率に比べて緩やかに変化するので、圧力式の数値解におけるタイムステップを大きくし、飽和率式の数値解におけるタイムステップの大きさは飽和率の変化量に応じて決める手法を用いた。
 本研究では、飽和率式に対する演算子分割法の効率的なアルゴリズムを開発した。移流項および拡散項を含む飽和率式は、移流を表す双曲型方程式と毛細管圧力による拡散を表す退化放物型方程式に分割される。まず、全体の方程式系の離散化には2段階の演算子分割を適用した。すなわち、最初に圧力および飽和率式を分割して逐次的に解き、次に飽和率式に伴う移流と拡散を上述のように分割して逐次的に解いている。圧力式はMFVE法により離散化し、飽和率式の時間分割アルゴリズムでは、移流式に対してFVE法による陽的離散化を適用し、拡散式に対してMFVE法による陰的離散化を適用した。陽解法では数値安定性の制限からタイムステップを細かく取り、陰解法では大きくすることができる。