表題番号:2002A-518 日付:2006/04/27
研究課題メソアメリカ南部地域における都市形成過程の比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 専任講師 寺崎 秀一郎
研究成果概要
 中米ホンジュラス共和国西部コパン県は先スペイン期、マヤ文明圏の南東端に位置し、世界遺産としても知られるコパン遺跡もこの地域にあり、現在のマヤ研究の拠点としても知られている。寺崎は同地域において南東マヤ地域最大のセンターであるコパン遺跡の北東に位置するラ・エントラーダ地域で継続的に考古学調査をおこなってきたが、本研究課題による助成を受け、エル・プエンテ遺跡において集中発掘を実施した。
 エル・プエンテ遺跡では、中心グループ最西端に位置する建造物6・7を調査対象とした。同遺跡ではラ・エントラーダ地域最大の神殿型ピラミッドをはじめ、複数の建造物の調査・修復がおこなわれ、建造シークエンスについてはほぼ明らかになりつつあるが、エル・プエンテ遺跡が地方センターとして成立・発展する背景を明らかにするための資料はまだ十分ではなかった。本研究で調査対象とした建造物6・7はエル・プエンテ支配者層の居住用マウンドである可能性が高く、コパン遺跡を中心とする南東マヤ地域における地方センターの形成過程を示す個別具体的な資料が得られると考えられた。発掘調査の結果、建造物6の最終居住段階においては、3部屋からなるマヤ式アーチ(疑似アーチ)をもつ上部構造の崩壊の様子が明らかな資料を検出した。このマヤ式アーチの存在は、コパン政体の影響下にエル・プエンテ遺跡が発展したことを示すものであり、ベンチの残存状態も良好であることから、将来的な保存修復の可能性も含めた対応が必要と考えられた。そのため、考古学・人類学調査を管轄するホンジュラス国立人類学歴史学研究所と協議の結果、継続調査の必要が認められ、調査区域を保護するための上屋や建築石材の保護のための措置をとった。今回の調査成果はホンジュラス国内では反響を呼び、同国最大の発行部数を誇るLa Prensa紙をはじめ、テレビ等のマスメディアでも大きく取り上げられた。