表題番号:2002A-513 日付:2004/02/21
研究課題台密事相書の基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 大久保 良峻
研究成果概要
 本研究はこれまで行ってきた天台密教の教学研究にあわせ、事相の研究を目指すものである。密教事相の研究自体が未開拓であり、どのような手順で研究を行うか課題は多いが、関係する研究領域は日本思想史や美術史など少なくない。そこで、先ずどのような文献が重要なのか調査し、それらの所在を確かめることも必要になってくる。既に印行されている事相書も多いが、重要書でも存否すら分かっていないものが多いのである。そういった書目の探索は継続的に行わなければならないが、今回の研究期間中に若干の成果があった。しかし、台密事相の集大成と言われる『阿娑縛抄』が基づいたとされる『密談抄』や『息心抄』のように、ほとんど原典を見つけられないものもあった。
 事相に関わる研究は低調なためか、研究者が当然のように記述する事項も、必ずしも十分に検討されたものではなく、漠然と一般説になっていることや概説書の引き写しであることも多々見受けられる。勿論、そういったことは密教事相に限ることではないが、研究が少ない分、相当な基本説においても訂正すべき事柄が見られるのである。
 この研究は今後の継続により成果が出るものであるが、これまでに検討した成果については近々発表する予定である。台密諸流の形成など全般的な課題や幾つかの個別の問題を考えている。