表題番号:2002A-142 日付:2003/05/03
研究課題「政治脳」の進化過程における意思決定能力の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教育センター 助教授 森川 友義
研究成果概要
「政治脳」を研究する背景として、博士論文及びその後の研究を通じて、数学、コンピューター解析、シミュレーション等の手法によって、どのような状況で人間同士が協力関係を築き上げることが出来るのかという主題で研究を行い、その縦軸として「進化」を導入する必要性を感じたことがあった。「政治脳」の研究2年目にあたっては、シミュレーションをターボパスカルからC++に変更し、より高度なプログラミングによってさまざまな解析に対応できるようにした。学会での研究発表では好評で、「政治脳」の研究が早稲田大学、オレゴン大学、インディアナ大学に留まらず、更にミシガン大学等の老舗の大学にもその研究を行う大学が増えてきたことはこの研究の最大の成果と言える。(なお、ミシガン大学のロバート・アクセルロッド教授は彼の大学院の講義において、私の書いた論文を使用している)

学術的には、この間の最大の成果は、所謂マキャべり的知性が、人間関係において自己利益の追求を原則として生存競争に勝つ能力ために、自分を実力以上に見せ相手を威嚇する能力(及びその威嚇を見抜く能力)、嘘をつく能力(及びその嘘を見抜く能力、更には嘘を見抜かれた後再び嘘をつく能力)、誰を信頼すべきかという洞察力(及びその信頼又は不信を予見し行動をとる能力)等において、常に拮抗して進化をとげてきたと検証できたことにある。2万世代までに区切って検討したところ、「政治脳」こそが人間の良好な協調関係の礎として機能しうるということであり、これは公共選択理論の根本的前提条件、つまり「人間の合理性」と「利己性」へのアンチテーゼとなりうる可能性がある。

現在、それを研究成果をまとめた論文は米国政治学会誌(American Political Science Review)において審査されている段階である。