表題番号:2002A-108 日付:2003/05/01
研究課題快・不快感情の脳波およびポリグラフィ的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 山崎 勝男
研究成果概要
強度の異なる身体活動が感情と前頭部EEG の偏側性に及ぼす影響を検討した.これまでに,運動後に生ずる快感情の増加や状態不安の軽減などが報告されてきたものの,感情変化に影響する主観的・客観的な運動強度は明らかにされてはいない.本実験の身体活動には,被験者が主観的に快適と感じる快適自己ペース条件と,70 %VO2 max条件の2条件を設定し,それぞれ15 minの自転車エルゴメータ運動を課した.EEGは運動前の安静時10 minと運動後の安静時60 minに渡って測定した.質問紙は運動前,運動中,運動終了後に行った.その結果,両条件で運動の終了直後から60 minの回復時点に至るまで状態不安が軽減した.快感情とリラックス感の消長時点や持続時間には,条件間で違いのあることが明らかとなった.快適自己ペース条件では,運動前と運動後の前頭部αパワーに左右差はみられなかったが,70 %VO2 max条件では運動終了後の回復時間帯には左前頭部が持続的に賦活していた.70 %VO2 max条件に認められた左前頭部のαパワーには,運動後の不安軽減と快感情が反映していたものと考えられる.不安の軽減と快感情およびリラックス感に随伴する前頭部EEGは,α1やα3の帯域成分よりも,α波の中心周波数であるα2帯域に求められることを本実験では明らかにした.70 %VO2 maxの身体活動で生じた快感情と前頭部EEGの偏側性は,少なくとも60 minは持続することが示唆された.