表題番号:2002A-105 日付:2003/04/25
研究課題アジア地域における産業技術及び家計消費構造の違いと環境問題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 鷲津 明由
研究成果概要
 これまでは日本の環境分析用産業連関表を応用して,CO2問題に着目して環境家計簿分析を行ってきた。環境家計簿とは各家庭の消費行動を環境面から見直すためのチェック方法のことである。すなわち,消費財のLCA的環境負荷を産業連関分析の手法を応用して評価した上で,各家庭の消費構成比の違いによる環境影響を確かめようとする。本課題のもとでは,従来行ってきた環境家計簿分析を慶應義塾大学産業研究所で開発された「1990年アジア諸国の環境・エネルギー問題分析用産業連関表(EDEN1990)」および早稲田大学政治経済学部・中村愼一郎研究室で開発された「1995年廃棄物産業連関表(WIO)」のデータベースに対して応用した。前者の分析では東アジア9ヶ国(日本,韓国,中国,マレーシア,シンガポール,タイ,インドネシア,フィリピン,台湾)の家計消費構造に違いによる環境影響をCO2とSO2の側面から明らかにした。また後者では廃棄物処理負荷という観点から家計消費行動を見直したが,それによると「環境に優しい消費生活」の中味について,CO2問題に着目した場合とは別の見解のあり得ることがわかった。また廃棄物産業連関表は廃棄物排出と処理活動が内生化された新しい形式の産業連関表であるため,その理論的意味についても考察した。これらの研究については,すでに論文(発行予定も含めて)としてまとめている。
そのほかに,つぎのような研究も本課題のもとで行った。すなわち,従来行ってきたCO2に着目した環境家計簿分析をより具体化して,生活時間の使い方の違いがどのような環境影響をもたらすかを調べた。具体的には「社会生活基本調査」でとらえられた属性の違う個人の生活パターンの違いによってもたらされるCO2誘発排出量の違いを試算した。また,そもそも環境家計簿分析は工学分野でよく行われているLCA研究に対して,どのような理論的意義を持つのかについて,過去の研究事例をサーベイし考察をまとめた。これらの研究については今年度中をめどに論文としてまとめる予定である。