表題番号:2002A-103 日付:2003/04/24
研究課題基準振動解析によるタンパク質ダイナミクスの比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 輪湖 博
研究成果概要
 タンパク質立体構造の構築原理を明らかにし、構造と機能の関係を理解することは、構造生物学、バイオインフォーマティクスなどにおけるポスト・ゲノムの重要な研究課題の一つである。そこでは、静的構造のみならず、動的構造を考慮した研究が不可欠であることが広く認識されているものの、ダイナミクスに関する研究の多くは個別のタンパク質に関するもので、より多くのタンパク質のダイナミクスを比較研究することによって、より大局的な視点から解析したものは殆んどないのが現状である。そこで本研究では、われわれが現在構築中のタンパク質の基準振動解析データベースを利用して、多くのタンパク質の動的構造を比較し、立体構造の構築原理、そして構造・機能相関の問題にアプローチすることを目的として研究を行ってきた。
 本年度は、まず、より多くのタンパク質について基準振動解析を行い、そのデータを蓄積した。
 その上で、タンパク質の立体構造を構成する部品としての局所構造の性格をダイナミクスの観点から明らかにするために、各基準振動モードについて、各原子ペアのゆらぎベクトルの内積をとり、正の相関が強い原子がそれぞれ一つの集合を構成するようクラスター化することによってドメインを定義する方法を開発した。これまで、動的なドメインを定義する方法にはDynDomというソフトがよく使われているが、この方法では、見た目あきらかにドメインが存在すると思われる場合でも定義されない場合が多く、その後の解析ができないという欠点があった。本研究で開発した方法はそれを補うことができ、ダイナミクスの観点からドメインを定義し、タンパク質立体構造の構築原理を考える上で、新たな視点を提供することができると思う。今後、得られたドメインを分類し、性格付けしていく予定である。