表題番号:2002A-074 日付:2003/03/10
研究課題非線形拡散方程式系および関連する界面問題の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 山田 義雄
研究成果概要
今年度の研究テーマは、次のような準線形拡散項を含む反応拡散方程式系
     ∂u/∂t=Δ[(1+αv+γu)u]+uf(u,v), ∂v/∂t=Δ[(1+βu+δv)v]+vg(u,v)     
に対する非定常問題の解析である。このシステムは同一領域で生存競争する2種の生物について、棲み分け現象を記述する数理モデルとして、1979年にShigesadaらのグループによって提案されたものである。未知関数 u,v は個体数密度を表わし、非線形拡散項は通常の拡散に加え、個体数密度にも拡散が依存することを意味している。反応項 f,g は u,v 間の相互作用を表し、Lotka‐Volterra型の競合モデルを扱う。このシステムについて、ゼロNeumann境界条件を課すと、初期値境界値問題の時間大域的な解の存在について、従来知られている結果は空間次元が2以下のケースに限られていた。また、空間次元についての制約をはずそうとすると、反応項に関する仮定が必要であった。本年度は R.Lu, P.S.Choi氏らとの共同研究によって、α,γ > 0 の場合、もう一方の方程式の拡散項が線形(β=δ=0)ならば、空間次元や初期データの大きさと無関係に時間大域解が一意的に存在することを示すことができた。うまくいった理由は、システムを準線形放物型方程式と半線形放物型方程式に分解し、それぞれの方程式についての基本解評価とself-diffusion 項をフルに活用して解 u,v のアプリオリ評価が得られた点にある。この方法は δ > 0 のときにも適用することができ、空間次元が5以下の場合に大域解の一意的存在を示すことができた。
 以上の結果は
[1] Y. S. Choi, R. Lui and Y. Yamada, Existence of global solutions for the Shigesada-Kawasaki-Teramoto model with weak cross-diffusion, to appear in Discrete and Continuous Dynamical Systems.
[2] Y. S. Choi, R. Lui and Yoshio Yamada, Existence of global solutions for the Shigesada-Kawasaki-Teramoto model with strongly coupled cross-diffusion, to appear in Discrete and Continuous Dynamical Systems.
で発表される予定である。