表題番号:2002A-072 日付:2003/05/08
研究課題アーベル方程式の構成とガウス和の数論研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 橋本 喜一朗
研究成果概要
2000-2002 年度 基盤C(一般)「アーベル方程式の構成とガウス和の数論研究」 
において, 申請者の大学院生(修士)星 明考 君と共同研究で,
ガウス周期の関係式の一部を幾何的に一般化し, 多変数関数体上の
巡回多項式族の構成を行った. ガウス周期の既約多項式については,
E.Lehmerによって 次数 e=3,4,5,6,8 の場合に
簡単な表示をもつ 1パラメータの e 次巡回多項式族が知られていたが,
高次のガウス周期の既約多項式に対して同様な巡回多項式族
を得ることは困難で, その背後にはガウス周期の情報を与えるヤコビ和が
e=7 で本質的に二種類に増えることが起因している.
この障害を解決する方法として, 我々はガウス周期の満たす関係式
関数体上での類似物を構成するという幾何的一般化を行ない, これによりガウス周期
の既約多項式から巡回多項式族が得られるしくみを明らかにし,
パラメータの個数も複数個に増やすことに成功した.
この構成法は, さらに高い次数の考察及び次数に対する
一般化も期待される. この研究は 上記の Lehmer の仕事を拡張する F.Thaine の
最近の研究にヒントを得て, それをさらに一般化したものである.
また e > 3 に対してある条件を付加することにより, e=4,5,6,7,8 に対して
e-[(e-3)/2]個のパラメータがついた e次巡回多項式族が得られること
を示した. 特に, この構成から得られた巡回多項式族のパラメータを特殊化し,
e=7 において定数項が n^7 である簡単な表示をもつ 1パラメータの族を得た:

F_7(n;X)= X^7-(n^3+n^2+5n+6)X^6+3(3n^3+3n^2+8n+4)X^5
+(n^7+n^6+9n^5-5n^4-15n^3-22n^2-36n-8)X^4 -n(n^7+5n^6+12n^5+24n^4-6n^3
+2n^2-20n-16)X^3 + n^2(2n^6+7n^5+19n^4+14n^3+2n^2+8n-8)X^2
-n^4(n^4+4n^3+8n^2+4)X+n^7.  
nとして(総実)代数体 K の単数を走らせると,F_7(n;X) が既約であれば
K の 7次巡回拡大の単数が得られる.これらの研究を更に高次の場合に進展
させることは今後の重要な課題である.